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アルトサックス修理事例01

アルトサックス修理事例

アルトサックス修理事例① 

※10年間神戸にある某修理屋さんにて定期的に預けて調整をされていた。

 

要望:全体的に吹きにくい気がする。何が悪いのか分からないのだが、楽器を教えてもらっている先生にも調整に出した方が良いと言われた。

修理代金:37000円(税抜)

所要日数:5日~7日

※今回は、通常の調整(タンポ交換無し・管体の凹み無し)のほぼマックスの調整です。

 通常この内容なら35000円~40000円です。

 ご予算に合わせて調整内容は、ご提案致します。遠慮なくご予算をお伝え下さい。

 

 

修理内容

 

各所チェック及び吹奏チェック

  1. 管体の凹み、曲がり
  2. キィの曲がり
  3. タンポのベタ付きがないか(特にクローズのタンポ)
  4. リークライトとフィラーゲージでタンポの閉じ具合とバランスをチェック
  5. 基準になるタンポの開き具合 etc.

 

今回の症状

  • 実音B♭(左手の薬指まで閉じる音)から下が鳴りずらくなる。
  • 実音E♭(右手の小指まで閉じる音)のレスポンスが非常に悪い
  • 実音D(最低音から1つ上の音)と実音D♭(最低音)でウルフが出る

リークライト・・・管体の中から明かりを照らしてタンポやバランスの状態を見る道具

ウルフ・・・二つの音が同時に鳴ることによって非常に気持ちの悪いヴィブラートのの様な音が出る

 

キィ全分解

 

1-2番管を外す

1-2番管のつなぎ目で息漏れを起こしてE♭から下の鳴りが極端に悪くなる事があります。

最後の吹奏チェックの際に分っても遅いので、初めて作業する楽器は、極力実施しています。(実施するかは、ご予算や全体の修理内容によります)

1番管・・・キィが一番多く付いている管体

2番管・・・右手の小指で操作するキィが付いている管体

 

管体とキィのクリーニング

管体やキィに付いた埃・唾の跡・古いキィオイル等を特殊な薬剤を使ってクリーニングします。

音孔は、特に入念に磨きます。(音抜けが大変良くなります)

 

タンポのメンテナンス

タンポの表面の汚れ(唾の跡・ほこり・メタルブースターのサビ等)を取り除いた後、皮の柔軟性を向上させ、ベタ付きを防止する薬剤を塗布します。

 

バネのサビ取り及びサビ止め

浮き出たサビをキサゲやスチールウールで取り除いた後、サビ止め剤を塗布します。

 

キィや芯金の曲がり修正

芯金・・・キィのパイプの中に入っている棒のこと

 

キィからタンポを外して調整剤を補充※重要ポイント

キィとタンポの間には、ラックやホットメルトと言う接着剤兼タンポ調整剤が入っています。

各メーカー共通して非常に少ない為にこの作業を実施します。(特にセルマー等の外国メーカーが少ないです。国内メーカー(ヤマハやヤナギサワ)も十分な量が入っているとは、言えません。)

 

調整剤が少ないとダメな訳・・・調整剤が少ないと、キィの中でタンポとキィの隙間があるので、タンポ調整をしてもすぐにタンポの形が変わってしまいタンポと音孔の気密性が悪くなってしまいます。

 

サックスやクラリネットのタンポ調整方法・・・キィの表面をバーナーの火であぶってキィの中に入っている調整剤をとかす。とけた状態でタンポをヘラ等で押さえてタンポが音孔をぴったり閉じるように形や角度を変える。

 

不良軟物(コルクやフェルト)の交換

 

タンポ調整をしながらキィの組み上げ

※途中で1-2番管を組む

 

シーズニング

タンポを閉じた状態にして置いておくことによってタンポを馴染ませる作業

 

タンポの再調整をしながらバランス調整をする

バランス調整・・・連動して動くキィが全部閉じるように調整すること

 

吹奏チェック

 

 

 

お客様の感想

まず上から下まで吹いた所で笑い出されました。そして「簡単に音が出る!!」。その後5分ほど楽しそうに吹きまくられ最後に、「ありがとう!!自分ヘタクソじゃなかったんだね~。

 私が、楽器を修理する上で心掛けていることは、

【演奏者の楽器に対するストレスを出来るだけなくして音楽を楽しんでもらいたい】

喜んでもらえ、今回も頑張って調整してよかったです。

 

 

私の感想

 今回は、案の定調整剤がほとんど入っていなかった。(10年間まともな調整をして貰ってなかったと言う事です。このような事は、往々にしてあります。)

 サックスやクラリネットは、悪い状態でも音を鳴らそうとして吹けば鳴ってしまう楽器です。(意味が分かりにくいですが・・・なんとなくわかって下さい)

 しかし、その様な状態で吹いていても音楽に集中する事が難しいと思います。(音を出す事に、より意識を向けないといけないので)

 プロの演奏者は、もちろん良い状態で演奏するべきです。趣味で楽しまれている方や初心者の方も良い楽器(高い楽器という意味じゃなく)で練習すれば上達も早くなり楽しい音楽生活が送れると思います。

 皆様が、誠実なリペアマンに出会える事を願っています。

 

最後に

新品の楽器が一番良い状態ではありません。

楽器を買うとおまけで付いてくる無料の調整は、あくまでもおまけです。

調整に出しても2.3ヶ月で鳴りが悪くなるのは、楽器が悪いのではなく調整が悪い可能性があります。